介護の基礎知識

老人ホームの種類

一言で老人ホームと言っても、実に11種類の老人ホームがあることをご存じでしょうか。ここでは老人ホームの種類を簡単にわかりやすく解説します。



運営主体による違い

老人ホームは運営主体により、国や地方自治体、社会福祉法人が運営する公的な施設と、民間企業が運営する民間施設に分けられます。

公的老人ホーム

公的施設である老人ホームの事を『介護保険施設』と言います。公的施設の老人ホームの運営主体は主に国や地方自治体など公的な団体であることから、一般的には介護度の重い方や低所得者の方などの保護と支援に重点が置かれ、全部で5種類あります。

また、公的な老人ホームは国の補助金を受けていることから、一般的には民間の老人ホームよりも費用が安く人気があります。そのため、よほど運が良くなければ施設への入所をしたくてもできないことがほとんどで、入居待ちが長くなる傾向があります。

①特別養護老人ホーム

認知症が進んでいる、寝たきりであるなど要介護度が高い方も入所できます。一般的に費用が安く人気があるため、入居までの待ちが長くなる傾向があります。

なお、特別養護老人ホームには従来型の多床部屋タイプと、新しいユニットタイプ(個室)がありますが、現在では従来型よりユニットタイプの方が数が多くなっています。

②養護老人ホーム

経済的な理由で在宅サービスを受けることができない方向けの老人ホームです。なお、養護老人ホームは介護施設ではないため、介護が必要になると退去しなくてはなりません。

③介護老人保健施設

在宅復帰を目指す目的のための施設で、例えば病院退院後すぐの在宅復帰が困難な場合などに、原則3カ月間の利用期間内で医療ケアやリハビリを受けることができます。

④介護医療院

医師や看護師が常駐しており、長期の入所や終身利用もできます。また、要介護の方や認知症の方も入所できます。

⑤ケアハウス

「一般型」と「介護型」の2タイプがあります。

「一般型」は家族からの支援が難しい60歳以上の方なら入居が可能ですが、原則的に介護度や医療依存の高い方は入居できません。「介護型」は介護サービスが提供されるので、入居後に介護度が高くなっても退去をせまられることはありません。

民間企業が運営する施設は6種類

一般的に公的施設に比べると費用は高くなりますが、サービスの充実、快適な生活を送れる、幅広い身体状況に合ったケアが受けられるというメリットもあります。

介護もサービス業ですので、各社が特別な設備や特異なニーズへの対応など独自のサービスを打ち出すことで他社との違いをアピールしています。

①介護付き有料老人ホーム

24時間介護スタッフが常駐しており、種々の介助サービスが受けることができます。一般的には介護が必要な65歳以上の方が対象の施設ですが、介護が必要ない自立の方が利用できる混合型の施設もあります。主に都道府県の指定(認可)を受けている施設を指し、高級な施設から低価格な施設までいろいろあり入居条件も幅広いため、比較的入居までの待ち時間も短めです。

また、看取りまで対応しているところが多く、終の棲家として選ばれる方も多くいます。

②住宅型有料老人ホーム

施設スタッフによる食事・掃除などの生活支援サービスや見守りなどのサービスを受けることができますが、介護サービスは外部のサービスを個別に契約して利用します。基本的には居室以外に食堂、浴室、洗面所、トイレのほか、レクリエーションスペースやリハビリスペースなどが整えられ、介護付有料老人ホームではできない、介護保険を用いた福祉用具のレンタルもできます。また、施設によっては、看護スタッフや夜間も介護スタッフが常駐しているところがあります。

入居条件や基準は施設によりさまざまで、60歳または65歳以上、自立~要介護5まで幅広いのも特徴ですが、介護度が高い、医療依存度の高い方は入居できないこともある他、入居後も認知症や要介護度が高くなると退去する必要がある場合があります。

③健康型有料老人ホーム

健康型有料老人ホームは、介護の必要がない、自立した生活を送る事のできる高齢者の施設です。そのため、介護が必要となった、重度の医療的ケアが必要になったという場合には退去しなければならないケースが多く、正直なところ現在の日本の介護ニーズにマッチしません。また、一般的に入居一時金や利用料金は高くなりがちです。

ただ、外部のサービスの利用は可能なので軽度の要介護状態の方であれば充実した生活を送る事も可能と言えます。

④サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

60歳以上の方が入居できるバリアフリーの賃貸住宅で、比較的介護度が軽い方やある程度自立している方が、自宅で暮らすことが難しくなってきた時の選択肢となることが多い住宅です。安否確認と生活相談の提供の他、介護が必要になった際には外部サービスの利用も可能です。

一般形、介護型の2種類があり、日常生活のサポート、身体介護、リハビリや医療行為、見取りなどといった様々なオプションが利用できます。

⑤グループホーム

グループホームは、認知症高齢者を対象にした少人数制の介護施設のことで、施設のある市区町村に住民票がある、認知症を患った65歳以上の方が入居できます。介護保険上では「認知症対応型共同生活介護」として位置付けられ、5人から9人の少人数を単位とした共同住居の形態でケアが提供されます。

家庭的な環境下で、食事や掃除、洗濯といった日常生活の行為を利用者やスタッフが共同で行うことで、 認知症を患っていても可能な範囲内で自立・安定した生活、そして本人の望む生活を実現することを目的としています。

入居時の費用や利用料金、看取りの対応などは施設により様々です。

⑥高齢者向け分譲マンション

高齢者に優しいバリアフリー設計の分譲マンションです。大浴場があったり、24時間の見守りサービスや緊急時の対応はもちろん、インストラクターによる体操の時間やサークル活動など、老後を快適に過ごすための種々の生活支援サービスを受けることができます。基本的には入居=物件の購入となるため、もし転居することがあっても売却や譲渡、賃貸なども可能で、富裕層向けの施設(というよりもはや物件!)となります。

老人ホーム選択のヒント

TIPS①従来型(多床部屋)とユニットタイプでは料金が違う?

同じ特別養護老人ホームでも、従来型とユニットタイプでは料金が異なることはご存じですか?実は、ユニットタイプの方が少し費用が高くなるのです。少しでも費用を抑えたいという切実な願いから、従来型の多床部屋の特別養護老人ホームには根強い人気があり、入所までの待ち時間も長くなる傾向があります。

TOPS②入所される方により、多床部屋とユニット(個室)には相性がある

現役層から見れば、終の棲家となる老人ホームを選ぶのなら『絶対個室タイプの方がいい!』と思う方が多いのではないでしょうか?

でも、入所されるのはあくまで“本人”であり、そのご家族ではありません。ご本人様の現在の状態や病状、あるいは認知症の進行具合により、多床部屋の方が快適で、安心して落ち着いた生活を送れることも多々ありますので、そこはケアマネージャー(介護支援専門員)など介護のプロの意見も聞き、どのような環境がご本人に適しているのかを慎重に判断しましょう。

TIPS③退去しなくてはならない現実

介護度は認定調査により定期的に見直されますが、私はこれまで、更新の結果介護度が改善したことを理由に施設から退去せざるを得なくなった方を何度か見てきました。

特別養護老人ホームに入所できたとしても、必ずしも終身利用が保証されているわけではなく、退去要件というものが設定されていることを予め知っておく必要があります。例えば、特別養護老人ホームの入所条件は要介護度3以上と定められていますが、日々の介護や医療ケア等により要介護度が改善されるケースは多々あります。要介護度が2以上に改善された結果、退去を求められるということもあることは、施設利用前に知っておく必要があります。

まとめ

老人ホームの概要はおわかりいただけましたか?大切なのは、ご本人様が今何を必要とされているのかという希望、そしてこれから何が必要となる(可能性がある)のかというニーズ、そして、ご本人様を支えるご家族の(金銭を含む)サポート。老人ホームは、これらを総合して考えることが必要です。

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